第3回 『いすゞ・Bellett』から『いすゞ・ジェミニ』へ (後期)パートT
第十章 〜 いすゞ・ベレット 理想への飽くなき挑戦 〜
(昭和45年4月発行のカタログより いすゞ・ベレット1600デラックス)
GTという名を冠される車にいちばん大切なものは、豪快なドライブ、フィーリングが味わえる卓越した性能とその高速性能にみあう安全性、そして長距離走行にも疲れない居住性。わずかな改造を行えばレースにも参加できる性能を秘めているが、それは決してスポーツカーではない。豪華な実用性を持った最高級のツーリングカーなのだ。 これを原点にいすゞ自動車は開発に取り組んできたわけなのである。 そして昭和43年、NEWベレット1600GTが誕生した。空気抵抗が少ない美しいボディスタイル。高速安定性が良く急カーブを切っても車体が傾かない独得のサスペンション。理想的な運転姿勢をつくり、長時間の高速走行を豪華で機能的な室内。その運転感覚は“ベレット・フィーリング”という言葉を生み、全ての《GT》の指標になろうとしている。更にヘッドランプを4灯とし光力を50%強化。テールランプも2倍明るくなり、夜間の高速ドライビングをいっそう安全なものにした。 |
(発売当時、用意されたボディカラー)
同時に昭和43年より、高性能DOHCエンジン開発に着手、その完成を見た。昭和44年には苛酷な耐久力を試される。鈴鹿12時間レースにプロトタイプレーシングカー・ベレットGTXで参戦。 117クーペに搭載された120馬力のG161W型をベースにチューンされたエンジンは、吸排気系のチューンとエンジン本体の細部のチューニングにより160馬力に近いレベルまで引き上げられ、その比類なき高性能と耐久性を見事に実証。ポルシェカレラ6ほか名だたる2リットルマシンを撃破した。このエンジンは後のベレット1600GTRに受け継がれ今もエンスージアストの心をとらえている。 |
(12時間耐久レースに参戦したベレットGTXとそのエンジン)
★ 〜 いすゞ・ベレット 更なる飛躍!! 〜
第17回 東京モーターショー(昭和45年)参考出品車
ベレットMX1600−U
実際に生産が目指されたMX1600は、いすゞでのリデザインを経て、MX1600−Uに発展する。第2次プロトタイプの基本レイアウトは、変わらぬもののスタイリングをはじめ、各所に改良が加えられていた。 ボディはFRP製となり、ヘッドランプは4灯式で低い位置にぶら下げる。エンジンも新たに117クーペEのG161WE型になっている。この2次型はシャーシ単体も含め3台製作されたが、いろいろな事情が重なり、ついに生産されずに終わってしまった。 |
主要諸元
全長 | 4100mm | |
全巾 | 1650mm | |
全高 | 1100mm | |
定員 | 2名 | |
ホイールベース | 2450mm | |
最小回転半径 | 5.2m | |
エンジン型式 | G161W型 | |
変速機 | ヒューランドFT200A5速 | |
タイヤ | BR70−14 | |
ブレーキ | 4輪ディスク |
4本スポークの奥には丸型7連メーターが。ふたつのシートは本革製のバケットタイプ。 200km/hの速度計などもあり迫力満点。MX1600用に120馬力から140馬力に 高められたG161W型エンジンをミッドにマウント。 |
★ ベレットの歩みは日本のモータースポーツの歴史
昭和39年6月に登場したベレット1600GTはそのハイパワーと、全輪独立懸架が生む抜群のコーナーリング性能で日本のモータースポーツ界を席捲した。弾丸のように疾走する英姿はあらゆるレースで熱い視線をあび、チェッカーフラッグを掻い潜った。 マニアに「ベレG」と愛称され同クラスに無敵の強みを誇りレーシングマシンの指標となった。昭和44年に高性能DOHCエンジンを開発しレースを技術革新の舞台とするいすゞ技術陣は、さらにこの心臓を生かすベレットR6、R6スパイダーを開発し昭和45年秋、ビックイベントであるオールスターカップに総合優勝したのである。 |
モノコックボディのR6スパイダー、S45年 | S44年日本GPにデビューしたミッドシップマシン いすゞR6クーペ |
エンジン型式 | 161W型DOHCエンジン | |
排気量 | 1584cc | |
圧縮比 | 12 | |
最高時速 | 280km/h以上 | |
最高出力 | 180ps/8200rpm | |
最大トルク | 16.5kgm/70000rpm | |
車輌重量 | 550kg | |
変速比 | 1速2750/2速2285/3速1666/4速1350/5速1136 | |
最終減速比 | 3.444 |