昭和41年9月、いすゞ・ベレット1600GTは細部にわたって大幅な改良がほどこされた。
メーカーではこれをマイナーチェンジと発表し、その通り外観からは判断できないような改良であったが、
世論ではモデルチェンジではという声もあった。何故ならこのニューベレット1600GTには旧1600GTの面影が
微塵も感じられなかったことである。
それほどこのモデルの性能・居住性といったものは格段に進歩したものになっている。
インテリアデザインで大きな変化をみせたのはインスツルパネルである。といってもサルーンを見慣れた人ならことさら新しく
は感じられないが、このGTとしては全く新機構である。中でも旧型ではトランスミッションの上にあった小さなメーター類がすべて
インスツルメントに1列に並べられドライビングする上において大きな効果をもたらしている。
パネル全体から受ける旧型ほどの強烈な特徴はないにしても、機能的な面で格段の進歩が認められる。
スイッチ類もワンタッチ操作のものに改良された。
トランスミッションの行動もギア噛合率の改善によっていちぢるしくノイズが小さくなり、またシフトコントロールもきわめてソフトで
軽いものになった。
ローギアのシンクロ化はベレットにおけるかねてからの念願で、ユーザーからみれば今回はこれだけでも大きな進歩であろう。
シンクロも強力で2nd・40km/hからローに入れても軽いシンクロノイズがあったのち確実にローにダウンできた。
コントロール装置が軽くなったのは、シフトレバーばかりではなくクラッチペダル・アクセルペダルなども旧型のそれとは比較に
ならない。特にクラッチにはダイヤフラム・スプリングを新採用しており、その踏力は旧型の印象からして約1/2まさに踏むほどに
軽くなるというものであった。
ニューベレット1600GTではミッションノイズも小さくなったが、エンジンノイズもきわめて静かになっている。
音が静かになったというより振動がなくなったという方が適当かもしれない。
搭載されているエンジンがニューベレット1600GTでは、クランクシャフトが5ベアリング支持に改善されており
爆発荷重に対する剛性が上がったために高回転時の軸ぶれがなくなったこと、このエンジン自体に原因する振動源ともうひとつ
エンジンのマンティング法が改善されたことによって車室に伝わる振動がいちぢるしく減少し、快適な居住性をもった車に
新旧生まれ変わっている。
エンジンの改善にともない排気量もやや増大しパワーアップが計られている。
このパワーアップ分はそのまま高レシオになったトランスミッションおよびファイナル・ギアに生かされ高い走行性能に反影
されているようにみうけられる。
ニューベレット1600GT 主要諸元表