かつて国産中型車の標準はクラウン・セダリックで代表された1.5リットル級であったが、法の改正に伴い主力が2リットル級に移り、
1.5リットル級で残ったのは僅かにいすゞ・ヒルマンとトヨペット・コロナの2車であった。しかしいずれもタクシー用には不向きで、
オーナー用としてもどちらかといえば女性向きというイメージが強く、最も手頃なサイズながら販売成績の面からは国産車の中で最も
弱体なクラスであった。
当時の噂ではブルーバードの新型もこのクラスをねらっているといわれるが、それに先駆けていち早く名乗りをあげたのが昭和38年6月
に発表されたいすゞ・ベレットであった。
ヒルマンで確立したオーナー側とベレルディーゼルで実績をあげつつあるタクシー向けという2つの相反する需要を目論んでいるわけで、
機構面からも積極的にスポーティーなオーナー向けとタクシー向けを区別していることが、いすゞ・ベレット最大の特徴になっていた。
ボディは根本的にはトヨペットのコロナとほとんど同サイズの4ドア5人乗りのセダン1種であったが、内外の仕様によりデラックスと
スタンダードに区別される。様々な各種の要素を組み合わせることによってスポーツ風なものからタクシー用まで実に24種類のモデル
が選択できるようになった。
更に特筆されるのはサスペンションで前は普通のコイルとウィッシュボーンによる独立であるが、後ろにはこのクラスの国産車としては
初の独立式を採用しロードホールディングの向上を図っていた。
車輌重量はベレット1500で915kg・同デラックスで930kg、1800ディーゼルで990kg・同デラックスで1000kg、
MAXスピードはガソリン車で137km/hディーゼルで110km/h・同デラックスで104km/h、メーカーによればガソリン
車のSS1/4マイル所用時間は21.6秒と加速性能も1.5リットルクラスでは群を抜いていた。メーカーによる燃費率はガソリン車で
18km/リットル・ディーゼル車で21km/リットルであった。
主なデータ