昭和39年4月6日、いすゞ自動車からベレット1500セダンをベースにした本格的なスポーツクーペ・ベレット1600GTを
97万円で発売すると発表された。1600GTはこのクラスのものとしては国内で一番早く作られている。
2ドア、2+2座クーペ、ボディのプレスはドア・ルーフを除きセダンと共通だが、車高は40mm低く1350mmしかない。
エンジンはベレット1500を基礎として新たに開発された1579cc(83×73mm)で、シリンダーヘッドは軽合金製圧縮比は
9.3。キャブレターは標準がSUタイプ2個で、別にレース仕様としてダブルチョークのダイヤフラム型2個が準備されている。
連続高速回転に備えて、クランクピン径はベレット1500に較べて太く、カラムシャフトベアリングの数も6個に増して
動弁機構の剛性を高めてある。フライホイールも軽量化され、加速性を向上させている。
昨年秋の東京モーターショーにベレットGTが発表された時(その時は1500GT)、観覧者は中央のベレットよりも遠慮がちに隅に
置かれたベレットGTの方に多かった。スタイリングを欧米のデザイナーに依頼したというスポーツカーやツーリングカーがかなり展示
されていたショーであったが、それらと比較してもく遜色のない純日本デザインのベレットGTは好評そのものであった。
ベレットGTの特徴は、セダンをスポーツ化することだけでなく、ボディ・内装までスポーティに手を加えたこと。
クーペにされたベレットのタマゴのボディは見るからに精悍で、スポーツマンのパーソナルカーとしての雰囲気を持っている。
しかしベレットGTのようなGTは、オープンボディのものと違い、本来ヨーロッパ大陸の長距離旅行に便利な公道上の
高速ツーリングに属している。グランド・ツーリング(大旅行用車)の諸元にあるように、あらゆる天候にも耐えられる快適な居住性は
セダンのものより優れている。全体に英国調の感じが強く、それに合わせたカントリー・ドライビングをするのもこの
ベレット1600GTの楽しみのひとつといえる。
エンジン
ベレットGTのエンジンは、ベレット1500のものを性能本位にチューニング・アップしたもので、市販用としてはかなりハイ・
チューニングに属する。圧縮比も9.3と高く、SU型(日立HJD38W)のキャブレターをツインにしアルミヘッドを採用して
88PS/5400rpmの出力をもっている。このエンジンの特徴はトルクが広いレンジにありそれもエネルギッシュなレスポンスとなって反応する。